犬情、というのは、犬も歩けば棒に当たる、と似たようなことだ。
動いていれば何か面白い目に会えるということだ。
犬は口角が上がっているから、いつも笑っているように見える。
ピエロのようにふざけているように見える。
そんなふざけた犬の幻に乗せられよい気持ちになる夫婦を描いた。
これは第一回美学校映画祭開催の通知を受け興奮し、つくり始めた映画だ。
最初のシナリオは、もう少し明るく生き生きとしたファンタジーだった。
そして一応それに基づいてすべて撮ったが、まともに撮れているカットは少なかった。
当時、住んでいたのはクーラーのない木造アパートで、窓のすぐ外では大型マンションの工事が行われ揺れていた。7月の締め切った部屋で、パソコンは何かやるたびフリーズし、気が狂いそうだった。
だめなものはどんどん捨て、使えるところだけで何とかしなくちゃとのたうちまわっているうちにこのような筋に辿り着いた。
それは締め切り間近で、火事場の馬鹿力ってすごいなと感じ、独り小躍りした。
しかし人前に出し、他の作品と並べて見たとき受けた打撃もまた想像以上で、非常に恐ろしい思いをした。
そんな作品だが、いろいろ忘れた今見ると、結構笑える。
大雑把にいうと面白い。何も怖くなくなる。