『ちえみちゃんとこっくんぱっちょ』_高橋セレクション "12+1"_映画:『狂気の海』 | CineBunch

■ 『ちえみちゃんとこっくんぱっちょ』

chiemi.jpg2005年/50分/DV

 
監督・脚本:横浜聡子 撮影:平野晋吾、四宮秀俊、柿成大、中西朋暁 音楽:山田耕治
出演:鈴木由美子、森下法雄、工藤麻奈美、百田一枝
 
■「青森の春は汚いー」。厳しい冬は終息の兆しを見せ、雪解けの季節が訪れた青森。その地で一人ひっそり暮らす女・のり子の前に次々と現れる、父、その恋人、幼ななじみたち。彼らは、真冬の吹雪の如く、のり子の過去を、現在を晒してゆく。主人公のり子を演じた鈴木由美子は、演技未経験、地元の街でスカウトされた大学生(当時)。
 
★ 映画美学校第6期高等科修了作品。
 
● 主人公のり子が、忘れていた過去を、唐突な回想シーンによって唐突に思い出す、その唐突さにはほんとうにびっくりする。現在にとって過去は、なんの郷愁もなしに、いきなり地続きなのだ。しかし、春の雪解けとともに雪に埋まっていた犬の糞が唐突に地表に現れ、それをのり子のナレーションが「青森の春は汚い」と冷静に語るシーンから始まるこの映画にとって、その唐突さはしっかり脚本に仕組まれていたのだし、それを書き、撮った横浜聡子はほんとうに聡明なひとだと思う。
(万田邦敏)